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渾身の一作!「イペタムの刀鞘」

 この日記を書いたのは、もう9ヶ月も前になるか。いやいや、原稿を送ってもらったのがたしか昨年の11月だったから、きっかり1年か。作家を待たせるにもほどがある。普通、ここまで長引いてしまったら、作家か編集か、どちらかのモチベーションが下がるはずだ。ところがこの作品に関しては、全くそれがなかった。よりよい作品にして、世に送り出したい。私も作家である城本氏も、その気持ちは1mmも揺らがなかった。こうしたい、ああしたいとお互いに意見を出しつつ、理想の形を追い求め、ようやくたどり着いた。「イペタムの刀鞘」は、ようやく本日、出版を果たしたのである。

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■あらすじ
 遠い昔、北の最果て北海道にはエゾの国があり、そこにはアイヌの人々が暮らしていた。彼らは自然神カムイを敬い、自然と上手に共存する知恵を持つ民族だった。アイヌたちは、数多くの伝説を語り継いできたが、「妖刀イペタム」に関する伝説の禍々しさは際立っている。


 伝説によると、イペタムはたいへん恐ろしい人喰い刀で、一度暴れ始めたら満足するまで人を殺め続けるという。この妖力を封じるには、特別な鞘が必要だ。しかし、イペタムの鞘を作れる人間はこの世にたった一人しかいない。


 石狩川下流にあるコタン(アイヌの村)に、蛇の痣(あざ)がある孤児がいた。彼カカミは村中の人間から「悪魔」と忌み嫌われていた。しかし、イペタムに魅入られた彼は、「いつかイペタムの鞘を作る」ことが生きる目的になった。寝食を忘れ、鞘作りに没頭するカカミをそっと見守るのは、以前、皆殺しにあった村で姉と二人だけ生き残った美しい娘、ミナ。何度も諦めかけたカカミだったが、そのたびにミナに励まされ、数年の研鑽が実を結んでついに鞘を作り上げた……。


 倭人がアイヌの領域に侵入し、エゾ地のあちらこちらで悲劇が起こりゆく時代を舞台背景に、妖刀イペタムにとり憑かれたカカミとコタンに降りかかる大惨劇を描いた長編名作リアルファンタジー、ここに登場!



 まさに感無量。これからこの作品をより多くの人の手に届けるため、あちこちに告知をしなければならない。まだ仕事は終わった訳ではない…と思いつつも、今宵だけはこの達成感に酔いしれていたい。この作品を無事出版できたことを、才能あふれる作家の城本氏、素晴らしいイラストレーターであるkaya8氏、最後まで頑張ってくれたマイカの制作スタッフに感謝したい。