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PDAと手帳、それぞれの良さを使いこなす(取材された記事 日本能率協会)

パソコン通信がきっかけで、PDAにはまる

 会社社長でもある井上さんだが、お会いしてみるとほんわかと柔らかい物腰の女性。伺えば、もともとは主婦業をしながら、ニフティのサブシス(フォーラム運営者)をしていたそうだ。そのときに、どこからでもパソコン通信のできる環境が必要だった。そうして出会ったのがHP(ヒューレットパッカード)100LX というPDA。スケジュール管理、アドレス管理、ToDo管理という主だった機能は、このマシンが今でも自分の中での使い易さの基準になっている。といっても主婦だった頃はそれほどスケジュールがあるわけでもなかった。そこで、お料理のレシピや読書メモ、映画のタイトルなどを入れてデータ管理していた。「その頃は、こんな小さなマシンにいろいろな機能があることが嬉しくて、友達に見せびらかしていました(笑)」。当時は女性でこのようなマシンを使っている人が少なかったため、あちこちから取材を受けるようになった。いろいろなPDAを持ち歩くうちに、ますますPDAの魅力にはまってしまい、気が付いたら自分が取材する側に回っていた。PDAがきっかけでライター業を始めるようになっていた。

デジタルの長所と短所

 売り場の風景売り場の風景現在主に愛用しているのは、ソニーのクリエ PEG-UX50。「スケジュールを一覧で見られることが重要なんです。私が使っているのはKsDatebook というフリーウェアで、これは月間スケジュールを表示すると、どの日が空いているのか一目瞭然です。そしてToDo管理は期限が近づくにつれてアラーム表示されます。それに終わったものは即座に消えるから、常に必要なリストしか表示しません。また、完了していない項目は自動的に繰り越されるので、うっかり忘れてしまうことも少なくなります。それから、PDAならどんなにたくさん情報を入れても物理的な重さは変わらない、というのも女性には嬉しいことですね」。また、紙だと検索に手間がかかるが、PDAなら頭文字を入力しただけで一発で探せる。こういうところがデジタルの良さだ。仕事柄、機種の変更も頻繁だが、スケジュールはパソコンに送って常に同期を取るようにしている。「逆にPDAの弱点はあっさり消える可能性があること。電池がなくなるとか。紙の手帳だったら消えるという心配はまずないですよね。アドレス帳なども、上書きするより過去の履歴があったほうがいいこともあります」。実は井上さんは紙の手帳も使っている。PDAのバックアップとして、確実に決まった予定は手帳にも書き込んでいる。齋藤孝氏に感銘を受けて、3色ボールペンで予定を管理しているという。「結局(デジタルもアナログも)手帳が好きなんですよね」。しかし外出先で取材するときのメモにはシャープのザウルスSL-C750を使用し、ノートなどは一切使わない。キーボードが打ちやすいので特に困ることはないという。PDAは寝るときにも枕元に置いている。「寝ようとすると、思い出すことってあるでしょう。そうしたらすぐメモできるんです。キーボードが光るので真っ暗でも書けて便利ですよ」。もちろん目覚まし時計としても使っている。

モバイルワークに必要なものは?

井上さんの会社では、書籍や雑誌、電子出版など多様な業務を行っている。パソコン専門紙として名高い「週刊BCN(Business Computer News)」にも携わっている。週刊紙は様々な作業が同時進行するため、スケジュールは相当複雑になる。これらはExcelで表を作って管理している。サーバーにファイルを置いて、ホワイトボードにも転記し、スタッフ全員が見やすいようにしている。随時出力して手帳にもはさんでいるが、この内容をうまく PDAに取り込めないか、現在試行錯誤中だそうだ。
モバイルワークに必要なものは何かと井上さんに伺った。「自分が現在どんな課題をどれだけ持っているか把握し、それらをすぐに取り出せるツールであることではないでしょうか。メモ帳でもいいけれど、PDAだとメモを時系列に管理できるので、検索するのに便利です。でも結局、紙とデジタルそれぞれの良さがあると思うんです。PDAが好きな人って手帳好きな人が多いような気がしますよ」。井上さんの PDAには手作りのアクセサリーが付いている。デジタルを熟知しながらも、アナログの良さを忘れない、井上さんの柔らかい人柄の象徴のように感じられた。

(2003年頃)