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『マッキントッシュ・シャーロック・ホームズ法』(荻島由希夫)



 正確にいうと、これは本ではない。昔、「Mac User」という雑誌があった頃、同誌の連載記事として掲載されていたものだ。同誌が廃刊になった今となっては、この記事を入手する手段はないが、私の場合、たまたま著者の荻島氏と知り合い、コピーを譲っていただいたのだ。


 全15回のこの連載記事、当時かなり話題になっていたようだが、それもそのはず。内容が、いい意味でかなりぶっとんでいる。この記事のテーマ、企画書には「DTPのプロフェッショナルとは?」とあったそうだが、私が読んだ限り、そんな内容ではなかった。もっと広く、もっと深い…大雑把なまとめ方で恐縮だが、「どう生きるべきか」という内容だったように思う。


 特に印象的だったのは、「心の目で見る」ということ。人は普段、いろんなものを見ているようで、実はちゃんと見てはいないのだ。それこそ、シャーロック・ホームズ並みの観察眼をもっていろんなものをしっかり観察できていれば、一日の経験から学ぶべきことはもっとずっと多いだろう。


 次に印象的だったのは、「自分の資質を確認するための9つの質問」。これは、「もし自分の人生を変えるきっかけを求めていて、そのために何か実際的なことをしたいのだったら、一生のうちの1週間でいい、やってみる価値はあると思う」という文章のあとにあった9つの質問だ。もし、これらの質問に対する自分の答えが、現状の生活と大きくかけ離れているようであれば、一度すべてを完結させて、じっくり考えてみよう、とあった。



  1. あと6ヶ月しか生きられないとわかったら、生活をどう変えるか

  2. 誰と一緒に住んでもよいとなったら、誰を相手に選ぶか

  3. 世界のどこに住んでもよいとなったら、どこを選ぶか

  4. 時計もなく、睡眠時間を削る能力もないとしたら、どのくらい眠るか

  5. 食事時間というものがなかったら、いつ、どのくらい食べるか

  6. 金というものがなかったら、どうするか

  7. 自分が何歳なのかわからないとしたら、一体、何歳だと思うか

  8. 生まれ変われるとしたら、どういう性格を選ぶか

  9. どんな分類法も使えないとしたら、自分を何と説明するか



 このほかにも、「原則主義」や「目標設定学入門」、「本気の本気」など、目からウロコがパラパラと音を立てて落ちるような内容がぎっしり詰まっていて、夢中になって読破してしまった。いやいや、この記事は本当にすごい。目的を見失いそうな現代社会の大人たちにこそ、こういった書が必要なのではないか。