雷猿(楠田文人)

 その猿を初めて見たのは、小学生の夏だった。「振り返って見ろ」という声を聞いて振り向くと、雲の中からビルの屋上に向けて一本の紐が垂れ下がり、その紐を伝って上から何匹もの猿が降りてきた。

「おい、あれは何だ!」というと、その声に友達が振り返り、「あれって何?」と返した。どうやらその猿は、僕にしか見えないらしい。
 猿は、上から下に順番に赤い玉を手渡していき、一番下の猿はその赤い玉を屋上に置いた。
ポツッ。肩に雨粒が落ち、川向こうの黄色い古ぼけたビルを見た瞬間、ドシャーン! という凄い音がして、そのビルに雷が落ちたのだ。ビルは炎を上げながら崩れ落ちた。雷は、あの赤い玉を目印にして落ちてきたに違いない。

雷猿(マイカ)

雷猿(マイカ)

 

 

井上 真花(いのうえみか)インタビュアー

投稿者プロフィール

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。日本冒険作家クラブ会員。

長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。

主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。

プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。ライフワークは「1000人に会いたいプロジェクト」

井上真花の公式ホームページはこちら

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