【週刊ポッドキャスト生活】#18 ポッドキャストをポッドキャストたらしめるものは何か

ポッドキャスト関連のニュースを効率よく収集するため、定期的に検索し、自動的に収集できる仕組みを工夫しています。ポッドキャストを始めた頃から続けているので、もう17年以上になります。昨今では毎週のようにポッドキャストや音声コンテンツの話題が飛び込んできますが、4、5年前には考えられないことでした。

Googleでの検索数をもとに人気の話題を調べる「Googleトレンド」で、国内の「ポッドキャスト」というキーワードの人気度を調べると、2020年1月頃から上向きに転じています。その前の数年間は寂しいもので、月に1つでもあれば良い方で、それも海外の話題でした。

ポッドキャスト関連の話題が増えて嬉しいところですが、上図のグラフを見ての通り、ピークを迎えた2006年5月にはまだまだ及びません。当時、ポッドキャストの認知度は今より低かったにも関わらずニュースは多かったし、調べる人も多かったようです。

第1回で紹介したように、海外でも2005〜2006年頃に最初のピークを迎え、そのあと日本と同じように衰退していったのですが、2014年12月に転機が訪れ、今では2006年時の2倍以上の人気度になっています。日本もまだまだこれから伸びると期待しています。

曖昧になるポッドキャストの定義

「ポッドキャストとは何か」と聞かれたら、ポッドキャストの配信者でも答えに窮するでしょう。「ポッドキャスト」という言葉自体は、音楽プレイヤーの「iPod(アイポッド)」と放送を意味する「Broadcast(ブロードキャスト)」を組み合わせた造語です。「放送」とは、多数に同時に音声や映像を送信すること。インターネットに接続されていないiPodに向けて実現した画期的な仕組みでしたが、分かりにくかったようです。その後、動画やPDFなども配信できるようになるなど機能を拡張していったことも、分かりにくかった一因となりました。

今でも動画の配信は可能ですが、一般的には音声配信するサービスと認知されているため、インターネットラジオの一種とされることが多く、そこから「インターネット上の音声配信」をポッドキャストと呼ぶようになってきています。

ポッドキャストの仕組みができた2004年当時は、ポッドキャストの「仕様」が国際的なルールとして定められました。のちにAppleがポッドキャストを始めるときに仕様を拡張し、Googleも一部拡張をしていますが、あくまでもその仕様に則ったものでした。

その国際的なルールである「仕様」を考えると、現在の「インターネット上の音声配信」すべてをポッドキャストと呼ぶのには違和感があります。

というのも、昨今のポッドキャスト関連のニュースで、見出しに「ポッドキャスト」という単語が使われるものの、じつに半数以上がポッドキャストの仕様に則していません。本来は「ポッドキャスト」と呼べないものが、「ポッドキャスト」というカテゴリに分類されている状況です。米国でもYouTube上の音声配信をポッドキャストと呼ぶことがありますし、10年以上前から解釈が広がっている傾向はありましたが、最近は特に増えてきています。

まもなく大賞などが発表されるポッドキャストのイベント「第3回 JAPAN PODCAST AWARDS」においても、ノミネート作品の中にはポッドキャストとは呼べないものが含まれております。もちろん、第1回からポッドキャスト以外の音声コンテンツも応募条件に含まれていたので、ポッドキャスト以外の音声コンテンツが含まれていることの是非を問うものではありません。音声コンテンツ全体が盛り上がることには大賛成です。

ただ私は、ポッドキャスト以外のコンテンツもポッドキャストとして扱われることで、ポッドキャストに関する誤解が加速していないかと危惧しています。「第3回 JAPAN PODCAST AWARDS」のノミネート作品は、重複を除くと26番組。そのうちのいくつが、本来の意味を持つポッドキャスト番組だと思いますか? ……じつは26番組中、国際的なポッドキャストの仕様を満たしているものは12番組と、半数以下なのです。

ポッドキャスト用のRSS

ポッドキャストの国際的な仕様は、それほど難しいものではありません。ポッドキャスト名や更新日の情報と、音声ファイルや動画ファイルのURLを記載した「RSS2.0」の文書を用意するということで、Apple Podcastでも下記のサイトを紹介し、この仕様を守るように指定しています。

RSS 2.0(https://cyber.harvard.edu/rss/rss.html

「RSS」の意味を紐解くと難解になってしまうので割愛しますが、簡単に言うとホームページなどの更新情報を配信するための仕組みが「RSS」です。ホームページの更新状況がプッシュ通知されるようにするには、専用のソフト(RSSリーダーなどと呼ばれるもの)にそのホームページのRSSを登録します。すると、更新されたタイミングで通知が飛んできます。

ポッドキャストは、このRSSの機能を使って、音声ファイルが更新されたときに通知がくるようにしました。

ところで、ホームページはどういう仕組みで表示されているかご存知でしょうか? HTMLという文書で書かれたファイルを「Webブラウザ」というものが読み取り、表示しています。このHTMLは、XMLという言語を元に仕様が決められました。RSSもまたXMLを元に作られているので、HTMLとRSSは兄弟とも言える関係です。

HTMLもRSSも、誰でも簡単に使えるようにと、シンプルで汎用性の高いルールが定められました。だからこそ、ホームページはマイクロソフトのInternet Explorerだけでなく、Google Chrome、Safari、FirefoxなどのWebブラウザでも表示することができるのです。 同じ理由で、スマホ用、タブレット用などのWebブラウザなどでも表示されます。

RSSにも、さまざまなRSSリーダーがありました。それと同じ理由で、ポッドキャストを聴くときも、さまざまなポッドキャスト用アプリが使えます。基本の仕様がシンプルなので、Appleのように、Apple Podcastsだけで機能する仕様を追加することなどもできるのです。

……記事が長くなってきましたので、このRSSによってインターネットに接続されていない音楽プレーヤーに擬似的な放送を実現しようとした画期的なひらめきと、そこから生まれた文化については次回に紹介したいと思いますが、最後に1つ。

ホームページを表示するHTMLも、一時期、Internet Explorerでしか機能しないものや、Netscape Navigator(いまのFirefoxの原型)でしか機能しないものがあり、ブラウザ競争が起こりました。しかし、この機能の違いがユーザーの混乱を招いたため、のちにブラウザごとの独自機能は廃止していくという動きになりました。独自機能を廃止し、「WEB標準」という誰でも変わりなく見ることができるものを目指すようになっていったのです。

現在、音声コンテンツは独自仕様や独自コンテンツが増えていっていますが、今後、このまま独自化が進んでいくのか、ホームページと同じように標準化に向かうのか、気になるところです。

【チームマイカ】佐藤新一(ポトフ) 

投稿者プロフィール

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佐藤 新一

2005年から配信する古参ポッドキャスター 。

Whizzo Production 代表。広告代理店の営業や企画制作会社のWEBディレクターを経て独立。WEB制作・ポッドキャスト制作やライター業などを行う。
座右の銘は「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクション」。

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