奈良の夜、草鍋と450年の墨屋さん

グルメ

2026年9月14日から一泊二日で、京都・奈良へ取材に行ってきました。初日は京都を取材し、その夜は奈良駅前のホテルに宿泊。取材に同席した編集部の方とカメラマンさんも同じホテルだったので、秋葉さんと私を合わせた4人で夕食に出かけました。向かったのは「とよのあかり すすの音」というお店です。

店先には「奈良県唯一」の文字が躍るポスター。ここで、はじめて「草鍋」をいただきました。地元の大和野菜をたっぷり使った草鍋は、とにかく葉野菜の量がすごい。運ばれてきた大皿を見たときは、正直ギョッとしました。

ところが、ひとくち食べてびっくり。想像していたよりずっと美味しくて、4人とも箸が止まらず、山のように積まれていた野菜があっという間に消えてしまいました。知覧どりの鳥刺しや、つくねもおいしかった。奈良に行ったら必ず立ち寄りたい店が、またひとつ増えてしまいました。

その帰り道、ひときわ目を引く店構えがあり、思わず立ち止まりました。

看板には「古梅園」の文字。名前からして「漬物屋さんかな?」と様子をうかがってみましたが、夜なので扉は閉まっていて、何のお店なのかわかりません。編集部の方と秋葉さんは、さっそくスマホで検索を始めました。すると、カメラマンさんが突然「ああっ!」と声を上げたのです。

「ここ、知ってる。来たことある」

さっきまで「これ、なんだろう?」とまったく知らない様子だったのに、急に記憶がよみがえったようでした。

カメラマンさんによると、ここは老舗の墨屋さん。創業は1577年ですから、450年近く続いていることになります。奈良墨は全国の生産量のおよそ9割を占めているそうで、その中でも「煤(すす)採り」から墨を製造しているのは、ここだけなのだとか。どうりで立派なお屋敷のはずです。

実は私の母は長年書道をやっていて、実家には墨がたくさんありました。おそらく、そのほとんどが奈良のものだったのでしょう。まったく知りませんでした。

ネットで調べてみると、墨の原料は煤と膠(にかわ)と香料。溶かした膠に煤と香料を混ぜ、手と足でよく練って作るのだそうです。製造期間にあたる11月から4月末までは、「にぎり墨」づくりの体験(4,000円〜)もできるとのこと。次は、時期を合わせて訪ねてみたいと思います。もちろん、そのときは草鍋もいただくつもりです。

株式会社 古梅園
創業:1577年
所在地:奈良県奈良市椿井町7番地
営業時間:月〜金 9:00〜17:00(土日祝定休)※時期により変わるため要問い合わせ
TEL:0742-23-2965/FAX:0742-27-1278
アクセス:近鉄奈良駅から徒歩6分、JR奈良駅から徒歩10分

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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