「スマート脳ドック」がきっかけだった

健康

2016年6月21日、母が亡くなった。脳梗塞だった。半年は葬儀や父のアフターケアなどでいっぱいいっぱいだったが、しばらく経って落ち着いてきた頃、ふと「自分はどうなのだろう」と思うようになった。

それまでずっと元気に暮らしていた母が、突然この世からいなくなったことを思うと、衝撃と共に、不安になる。脳の病気は、遺伝的な要素もあると聞いた。でも当時の私には、それを調べる具体的な方法も、勇気もなかった。

スマート脳ドックを知った

転機は2018年の1月。FacebookのフレンドであるIT評論家の尾原さんが、「スマート脳ドックhttps://smartdock.jp/)」というサービスを紹介する投稿をしていた。投稿を読んでみると、これが想像していた「脳ドック」とはまったく違う。

一言でいうと、「テクノロジーを使って、脳ドックを徹底的にシンプルにしたサービス」だ。従来の脳ドックといえば、病院への問い合わせ、電話での予約、当日の問診票の記入、長い待ち時間……というイメージがあった。それが、スマート脳ドックではすべてオンラインで完結する。

  • 予約はWebで
  • 支払いもネット決済
  • 問診もオンラインで事前に済ませる
  • 当日は行ってMRIに入るだけ

料金は1万5000円(当時)。一般的な脳ドックが数万円することを考えると、驚くほどの安さだ。「これは受けるしかない」と思った。

初体験。あまりの手軽さに拍子抜け

2018年1月15日、スマート脳ドックを初体験。

当日の流れは、想像以上に「スマート」だった。クリニックに着いたらすぐに呼ばれ、MRIに入るだけ。事前に問診をすませてあるので、受付での手続きもあっという間。「脳を調べている」という実感がないまま、あっけなく終わった。結果は1週間後にスマホで確認できると聞いたが、実際は2日後の17日にもう通知が来た。

「脳動脈瘤の疑いあり」

……え。

動脈瘤、という言葉の重さに、一瞬息が止まった。でも、続きを読むと少し落ち着いた。場所は右内頸動脈、サイズは3mm未満。3年以内に破裂する可能性は0.2%。経過観察で問題ない、とのこと。

安堵した。と同時に、ちょっと奇妙な気持ちになった。動脈瘤がある場所が、脳梗塞で亡くなった母と同じ「右内頸動脈」だったのだ。遺伝というものの不思議さを感じた。

動脈瘤、拡張。精密検査へ

2019年1月、1年ぶりのスマート脳ドック。

所見には「前回の動脈瘤指摘部がやや拡張傾向です」とあった。3mmだったものが、3〜4mmになっていた。精密MRA検査または造影CT検査での評価が必要で、クリニックの外来を受診するよう書かれていた。

「経過観察で大丈夫」から、「精密検査が必要」へ。ステージが一段上がった感じがした。

同年5月、フォローアップ検査を受ける。動脈瘤はさらに大きくなっており、治療の必要があるかもしれないという話が出てきた。スマート脳ドックからの紹介で順天堂病院の診察を受け、カテーテル治療かクリッピング(開頭手術)か、という選択肢を突きつけられた。

頭の中で、「カテーテル」「クリッピング」という言葉が、しばらく浮かんでは消えた。

東大病院で定期検査を受ける

再度、2020年2月にスマート脳ドックの検査を受けた。動脈瘤の隆起部に前回からの変化なし。サイズは3〜4mm。精密検査を受けたほうがいいと言われ、知人から勧められた東大病院を紹介してもらうことにした。2020年9月のことだ。

ここから、一年に一度、東大病院の検査を受けることになった。毎年夏に病院へ行き、MRIを撮り、先生に「変わりありませんね」と言われて帰る。それが6年続いた。私の中で恒例行事になりつつあり、「このまま一生付き合うことになるのかな」と軽く考えていた。

ところが2024年7月、「大きくなっているので、半年後にもう一度見せてください」と言われた。一年に1回が半年に一回になり、そして2026年1月。「5ミリを超えているので、一度きちんと検査しましょう」という話になった。

カテーテル検査が明かしたこと

2026年2月、東大病院でカテーテル検査を受けた。

精密な検査の結果、動脈瘤の最大径は8.4mmだった。MRIで見えていたサイズより大きく聞こえるが、先生によると「カテーテル検査のほうが精度が高いためで、急に成長したわけではない」とのこと。

場所は、右目の奥にある「海綿静脈洞(かいめんじょうみゃくどう)」。この「場所」が、じつはとても重要な意味を持っていた。海綿静脈洞は、頭蓋骨の「外(骨の中)」を通る部分に相当する。つまり万が一動脈瘤が破裂しても、くも膜下出血には絶対にならないのだという。これを聞いて、少しホッとした。

ただし、放置するリスクがないわけではない。動脈瘤のすぐ近くを「目を動かす神経」が通っているため、さらに大きくなると神経を圧迫し、複視(物が二重に見える)、目の奥の痛み、目が突き出るといった症状が出る可能性がある。

早めの検査・対策で命を守る

来月、あらためてMRI検査を受ける。その結果をもとに、治療のスケジュールを立てることになった。

2018年の1月、Facebookの投稿に背中を押されてスマート脳ドックを受けなければ、今ごろ私はこの動脈瘤の存在を知らなかったかもしれない。症状が出てから、慌てて病院へ駆け込むことになっていたかもしれない。

私の場合、たまたま命に別状はない場所だったが、無論そうではないケースもある。私の母のように、ある日突然倒れ、そのまま命を失ってしまう可能性は誰にでもあるのだ。

「なんとなく気になるけど、面倒だな」と思っている人に、スマート脳ドックをおすすめしたい。予約も、支払いも、問診も、すべてオンライン。当日はただMRIに入るだけ。現在、検査費用は2万2500円。結果は数日でマイページへ。

あの日、尾原さんの投稿をスクロールせずに通り過ぎていたら——と、たまに思う。早めに検査をしていたおかげで、動脈瘤が破裂する前に処置できるのだ。これからの医療は、こういった未病対策という方向に進んでいくのかもしれない。

(※本記事は私個人の体験をもとにしています。脳ドックや治療の選択については、必ず専門の医師にご相談ください)

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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