ネットスラングが弔いになるとき

レビュー&コラム

Xで、ある投稿が話題になった。「グエー死んだンゴ」というネットスラングが、投稿者の死後に予約投稿された可能性があるとして、多くの人の目に留まった。事実関係の詳細は確認できていないが、この投稿には通常とは異なる反応が集まった。

「グエー死んだンゴ」は、主にネット掲示板やSNSで使われる、死や失敗を軽く表現するスラングだ。深刻な状況をあえてユーモラスに語る際に用いられ、ネット文化圏では広く認知されている。

死を前にしてこの言葉を選ぶことに、どんな意味があったのだろうか。「深刻に受け止めすぎないでほしい」「泣かないでほしい」——そうした願いが込められていたのか。ネットの文化圏で過ごしてきた人が、最期までその言葉のリズムで語ろうとした、とも受け取れる。

死を前にして、あえて軽い言葉を選ぶこと。それは冷たさではなく、一種の配慮かもしれない。深刻さに押しつぶされそうな場面では、軽やかさが必要になることがある。「グエー死んだンゴ」は、悲劇の重さを和らげようとする試みだったのではないか。

ネットスラングには、特定のコミュニティへの帰属を示す側面がある。「わかる人だけに届けばいい」という限定性が、かえって親密さを生む。それは世界全体に向けた言葉ではなく、小さな共同体へのメッセージだ。そこには「自分がどこに属していたか」という記憶が刻まれている。「グエー死んだンゴ」という一文に込められた軽やかさの中に、最後まで自分らしさを貫こうとした人の尊厳を感じた。

SNSには、亡くなった人のアカウントが残り続ける。言葉が時を超えて読まれ、追悼の場にも、消費の対象にもなる。私たちはまだ、その扱い方の適切な形を知らない。

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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