【コラム】「せやろがいおじさん」に学ぶネットでの情報の伝え方

SNSでの発言について思うところあり、にまとめようと苦心していました。が、どうもうまくまとまりません。どうしたものかとネットを眺めていたら、とても衝撃的な動画を発見しました。

みなさん「せやろがいおじさん」ってご存知ですか?  Wikipediaで調べたところ、主に沖縄で活動しているお笑いコンビ「リップサービス」の一人、榎森氏が扮するキャラクターとのこと。沖縄の海を背景に赤褌姿で時事ネタを叫ぶと言うスタイルで人気を博したそうです。

その「せやろがいおじさん」が配信した「令和にまだ誹謗中傷やってる!?平成か!」という動画が、こちらになります。

動画で彼が言っていることをまとめてみると、こんな感じ。

・みんな、まだ誹謗中傷やってるの? もしかして、ネットなら匿名で誹謗中傷しても大丈夫って思っている? 今や、ネットは外野ではなくなり、時に特大級の鉄球が飛んでくる場所になった。匿名でも安心できないんだよ。

・話題の人に「どれだけダメージを与えられるか」という競争が始まることがあるけど、それに乗ってはダメ。自分と同じ意見の人の声ばかり聴いていると、自分は間違っていないという感覚が増幅し、言葉が尖っていく(エコーチェンバー現象)。さらに「いいね!」やリツイートを稼ぎたいと言う承認欲求が重なり、エスカレートしてしまう。

・誰かのネット投稿を拡散するだけなら大丈夫と思っている人に伝えたいんだけど、今はネット投稿を拡散するだけで罪になる時代。ボタンひとつを押すだけで人生終わってしまうこともある。

・よりよくしていくために議論したり批判したりすることは大事だけど、そこには攻撃性が含まれるということも意識して。内容をきちんと吟味し、攻撃性を薄める努力をした上で発言しないと、誹謗中傷と間違えられるかもしれないよ。

こうやって書いてみると、とてもロジカルな構成。失礼ながら、見た目の印象とはかなり違います。ところが動画を見ている時はそんなことは感じません。それはなぜでしょうか?

ひとつは、これが動画であるということ。「文字を読むのはダルいけど、動画なら見られる」という人は多いですね。せやろがいおじさんがメッセージを届けたいのは、おそらくそういった人たち。そこに照準を合わせ、見やすくする工夫をしているのですね。

たとえば、映像上の文字のあしらい。それから、テンポを速くしてどんどん進めていくということ。長さもちょうどよくて、パフォーマンス部分はだいたい3〜4分程度。スマホでパッと見るのに適した長さと言えるでしょう。

こうした彼の工夫によって、いかにも難しそう&耳が痛くなりそうな話が、とても軽いエンターテインメントのような仕上がりで提供されている。その工夫に驚き、感心しました。私も、こんなコラムを書いている場合ではありません。もう少し、見せる工夫をしていかなければ。

ちなみに「せやろがいおじさん」、動画の後半でこんなことを言っています。

「人間がネットを手にしてから、まだ十数年しか経っていません。もともと人間は手掴みで食事していたのですが、やがてお箸という文化を手に入れ、今はその使い方のマナーまで発展している。人間は進化できる動物です。諦めることなく、批判の作法を広げていきましょう」

うーん、かっこいい、かっこいいよ!

井上 真花(いのうえみか)インタビュアー

投稿者プロフィール

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。日本冒険作家クラブ会員。

長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。

主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。

プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。ライフワークは「1000人に会いたいプロジェクト」

井上真花の公式ホームページはこちら

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