【知識のワクチン】#04 解説:新型コロナウィルスの防御戦略の図

新型の感染が拡がっていますが、2020年2月17日現在、私たちの周りに、もうウィルスは存在しているのでしょうか?

2月17日現在、厚生労働省の集計では1人の図中①死亡例と、44人の図中②確定診断:陽性(検査でウィルス遺伝子が確認されたケース)が判明しています(クルーズ船の乗客は隔離されていて市中にはいないことから、今回は除外して検討しています)。

我々が現在の日本国内において「新型コロナ患者」と認識できるのは、この1人+44人だけ。これは、氷山の海面から上に見えている部分に相当します。

しかし、すでに感染が拡がっているということは、「発症してウィルスを拡散させているが、まだ検査で確定していない」患者、つまり図中③未検査:陽性が水面下に存在していると考えられます。新型コロナの患者は軽症・無症状である場合も多いので、ただの風邪として認識され、寝て治してしまった人がいる可能性があるということです。

また、次のような見方もできます。現在のところ、中国湖北省を除く新型コロナ患者の死亡率は約0.5%(確定患者200人がいて1人が死ぬ確率)程度です。つまり、日本に1人の死亡例があるということは、200人の確定患者がいても不思議はないということも考えられます。2月17日現在、患者は44名なので、仮に日本中の風邪の症状を持った人を検査したと仮定すると、あと156名の陽性患者が出てきてもおかしくない状況ではあります。

感染しているが、潜伏期間中か、軽い初期症状である患者もいると考えられます。中国から来日・帰国した人から感染した図中②確定診断:陽性の人たちを1次感染とした場合、そこから伝染した人は2次感染者と呼ばれます。これが、図中④潜伏期間中2次感染者です。2次感染者までは、初期の感染者の行動調査=積極的疫学調査をすれば、ほぼ判明します。

ところが現在は、この2次感染者から感染した人たち、つまり図中⑤潜伏期間中3次感染者が、すでに発見されている状況です。3次感染者は、行動調査をしても中国由来の感染者に行き当たらないため、「市中感染」つまり不特定の感染者からの感染が起こったと考えられています。

では、④潜伏期間中2次感染者⑤潜伏期間中3次感染者はどれぐらいいるのでしょうか?

WHO(世界保険機構)が、新型コロナウィルスのR0(Rノート)と呼ばれる「感染しやすさ」の暫定値を発表しています。これは「1人の患者から何人の患者に伝染するか?」を表していて、今回の新型コロナウィルスは1.4〜2.5、つまり1人の患者が1.4人から最大2.5人に移すと言われています。

さきほど見たように、①死亡例②確定診断:陽性の患者の合計が仮に200人いるとして、この人たちがR0最大値である2.5人に感染させていたとすると、すでに2次感染者が500人、3次感染者が1,250人いるという仮定も成り立ちます。これらの人々が次々と発症し、さらに感染を拡げていくシナリオもあり得るわけです。

これは単なる数字のお遊びなので、実際にこれだけの感染者がいるかどうかは「神のみぞ知る」です。しかしハイリスク者を守るためには、最悪ケースを想定する、つまり、これぐらいの未発見感染者がいて、わたしたちが日常的に接している人の中にも混じっているという仮定で考えて行動したほうが、より危険が少なく、厳重な対策を講じることができます。

秋月 雅史

投稿者プロフィール

人生の大半をITビジネスに捧げてきたが、起業してからは「自分が何屋」と言えない日々が続いているうちに本当に何者なんだかわからなくなった。いまは危機管理コンサルタント(本業)、ベンチャー取締役、Webブランディング会社マネージャーなどを兼業している。自称「丘にあがったセーラー」。帆船で世界中の夏を追いかける日々を過ごすことが目標。

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