【小説】古い色美術展(楠田文人)
- 2019/7/21
- 娯楽小説
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「ねえねえ」
「うん?」
「国立美術館で『印象派絵画展』をやるの、知ってた?」
「知らない」
「いいなぁ、行きたいなぁ。でも時間取れないしなぁ」
「印象派じゃないけど、近所でやってる美術展を見に行くか?」
「えっ!? どこでやってるの?」
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「へぇ、こんなのが足元にあったなんて」
「気にしてないと見落とすよね」
「着物の柄にしてもいいわね」
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「屋根の下がこんなになってたの?」
「和風だね。枯れた下の方は水墨画みたいだし」
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「横断歩道のペイントも絵の一部になってるね」
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「花のところにだけ色がある」
「ほんのちょっとだけなのに色が目立ってるね」
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「日本画風や水墨画風は見てきたけど、抽象画まであるなんて思わなかった」
「できあがりを考えてお知らせとかを貼ってたとしたら凄い」
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「今にも降りそうだね」
「壁の古さと曇り空が合ってる」
「立体的で複雑な建て方だし」
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「昔からずっとここにあったんだろうね」
「入場無料の『古い色美術展』。見終わった人はここで休むのかな」
「ふふふの話 5」より