カテゴリー:娯楽小説
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【小説】限定的念力(楠田文人)
(一) 早目の授業が終わって帰る途中、駅で平井に会った。 「やあ」 「戸田はもう帰り?」 「今日は授業が終わりなんだ」 「さっき朝倉に会ってさ、剣道場に行くって言ってた。あいつ、いつもさむらいの格好してるよな」 … -
【小説】虹(楠田文人)
通り雨だ。激しい土砂降りの後、何事もなかったのように雨が上がった。 見上げると虹が出ていた。 虹としては調子が悪そうで、消えていってしまう。 慌てた虹は部屋に入ってきた。 … -
【小説】天に昇る梯子(楠田文人)
ほとんどの建物は日常的に屋上を使いません。もちろん屋上に展望台があるので入場券を販売しなければならないとか、太陽光発電パネルを設置してあるのでしょっちゅう雑巾がけが必要であるとか、貯水槽でカワウソが泳いでないか確認す… -
【小説】竹(楠田文人)
竹には「真っ直ぐに伸びる」という印象があります。昔から「物干し竿」「竹垣」などの、真っ直ぐな素材が必要な場所に使われてきました。 「竹を割ったような性格」という言葉は、真っ直ぐで、あっけらかんとした性格… -
【小説】古い色美術展(楠田文人)
「ねえねえ」 「うん?」 「国立美術館で『印象派絵画展』をやるの、知ってた?」 「知らない」 「いいなぁ、行きたいなぁ。でも時間取れないしなぁ」 「印象派じゃないけど、近所でやってる美術展… -
【小説】きょう一日、さむらいをした(楠田文人)
僕はさむらいの日に当たってさむらいになった。 さむらいの日は誰にでもあるものではないし、全くさむらいにならない人もいる。何度も当たっちゃう人もいるらしい。うちは昔、叔父さんがさむらいになった時の道具が取ってあ…