父(91歳)の東京移住をAIでサポートしてみた(4) 施設選び

ChatGPT

これまでの記事はこちらにあります。

前回の記事では、次回の予告について「東京への移動から入居まで」 をお届けする予定と書きましたが、予定を変更し、施設選びについてもう少し詳しく書いておこうと思いました。以前の記事にも少し書いておきましたが、もう少し深掘りします。

施設を選ぶ際、どういったところをチェックすればいいかわからなかったので、生成AIにチェックポイントを洗い出してもらいました。その内容は、以下の通り。

1. 本人の生活の質(QOL)が保てるか

  • 食事の提供内容:食事は提供されているか/味や栄養バランスはどうか
  • 居室環境の快適さ:個室かどうか/広さ/陽当たり/収納/家具の持ち込み可否
  • アクティビティはあるか:頻度や種類(レクリエーション、体操、季節イベント等)

2. 将来的な安心感があるか

  • 介護度の対応範囲:要支援〜要介護5まで受け入れ可能か
    途中で転居が必要になることを避けるため、必ず確認を。
  • 看取り対応の可否:最期まで住み続けられる体制か
    医療連携がどうなっているかも確認ポイント。
  • 入浴介助の頻度:「必要時」とある場合、実際は週何回か明確に確認する
    週1回なのか、希望すれば週2〜3回なのか、施設により幅あり。

3. 緊急時の対応力

  • 夜間の緊急対応体制:夜間スタッフ常駐の有無/緊急コールは何人体制か
  • 医療連携:緊急時の提携病院、往診体制、日中に看護師がいるかどうか
  • 認知症・体調悪化時の対応力:介護が重くなっても継続して住める体制か

4. 金銭面と契約条件の明確さ

  • 費用の内訳:入居一時金/月額費用(家賃・食費・サービス費)/オプション料金
  • 途中退去時の清算ルール:日割り精算の可否/返金の有無
    トラブルが起きやすいので、書面で明示されているか確認。
  • 追加費用が発生する条件:介護度の上昇時や医療行為が必要になった場合の費用負担

いずれも納得の内容です。これを踏まえ、この記事ではいくつかの施設を比較・検討する中で、私が重視したポイントや実際に感じたことをまとめてみます。これから施設を探す方の参考になれば幸いです。


◆ 内覧は「必須」──現地でしか得られない感覚

どんなに資料を読み込んでも、やはり現地を見ないことには始まりません。そこで私は、必ず内覧に行くようにしました。写真ではわからない空気感や匂い、明るさ、活気など、「感覚的なこと」が大事だと思ったからです。具体的には、「なんとなく薄暗い」「活気が感じられない」「匂いが気になる」など。こういった印象は、意外と正直な判断材料になります。

◆ スタッフの印象──言葉よりも姿勢

内覧の際に気をつけたのは、スタッフの方の対応でした。相手の話をきちんと聞こうとする姿勢があるか、こちらの疑問や不安にどう応じてくれるか。中には、こちらの話を聞く前に一方的に施設概要を話して終わるところもあり、そうした場所には安心感を持てませんでした。入居した施設は、こちらの立場に寄り添い、家族の悩みにも丁寧に対応してくれました。「ここなら大丈夫」と思える大きな決め手になりました。

◆ 入居者の様子──挨拶が交わされるがどうか

施設で暮らしている方々の様子も重要です。入居した施設では、利用者同士が「おはよう」「こんにちは」と声をかけ合っていて、とても温かい雰囲気がありました。こうした日常のやり取りから、その施設に流れる空気が伝わってきます。

◆ 資料の質も見逃せない

施設を見学すると、必ずパンフレットや資料をもらいます。入居した施設の資料は、利用者や家族が不安に思うだろうポイントをきちんと押さえており、とてもわかりやすく作られていました。一方、スペックだけが書かれた資料を出してくる施設もあり、信頼感に差を感じました。

◆ 自立度の高い入居者が多いか

父はまだ自立して生活できる状態だったので、同じような立場の方が多い施設を探しました。介護度の高い方ばかりだと、かえって孤立してしまうかもしれないと感じたからです。ちなみに男女差は、いずれも圧倒的に女性が多数でした。感覚的には7〜8割程度でしょうか。

◆ アクティビティの充実度

父は人との交流を求める性格です。そのため、アクティビティが多く、入居者同士が自然に顔を合わせる機会がある施設を重視しました。いくつかの施設では、その地域の子どもたちとの触れ合いがある「子ども食堂」を開催しているところもあり、外部との交流がある点が好ましく感じられました。アクティビティの内容や頻度は施設によって大きく違うので、必ず確認した方がよいと思います。

◆ 長く住めるかどうか──介護度と看取り対応

将来を見越して、介護度が高くなっても住み続けられるかどうかも確認しました。私が選んだ施設は、介護度にかかわらず対応可能で、看取りまでしてくれる体制が整っていました。終の住処として安心できる点は大きかったです。

◆ アクセスの良さ──「家族に会いやすい」が大事

私は娘として頻繁に足を運ぶことになるため、自宅から通いやすい場所を最優先に考えました。次に重視したのは、孫(私の子供たち)が訪れやすいかどうか。父は孫に会うのを楽しみにしているので、なるべく行きやすいエリアを選びました。

◆ 生活のクオリティに直結する食事

父は一人暮らしで食事の準備が難しくなり、体調を崩したことがありました。その経験から、食事付き(朝・昼・夕)であることは必須条件でした。内覧した施設は献立表があり、その内容も確認しました。希望すれば、試食することもできるとのことです(要予約)。食事は1日3回ある上、味は好みがあるため、可能であれば試食して決めたほうがよいかもしれません。

◆ 24時間の安心感と、相談しやすい空気

何が起こるかわからないからこそ、常に誰かがいる環境が安心です。24時間、誰かがいてくれるという安心感は重要と感じました。また、スタッフと家族との距離が近く、相談しやすい雰囲気があるかも重要。最終的に決めた施設では、そうした「人のあたたかさ」も感じられました。

◆ 周辺環境──散歩と本が楽しめるか

父は散歩と読書が趣味です。最終的に選んだ施設の周辺は、散歩しやすい環境ではありましたが、図書館はやや遠め。ただ、他の条件が良かったので、ここは優先度を下げました。

◆ 運営会社の信頼性

施設選びは、運営企業選びでもあります。仮に運営会社が倒産してしまったら、入居者は本当に困ることになります。できるだけ経営基盤がしっかりしていて、実績のある企業が運営している施設を選ぶようにしました。


これはあくまでも私が父の好みを把握した上で重視したポイントになります。人によって、ポイントは変わってくると思うので、利用する方の要望をよくヒアリングし、現地に足を運んで確認するとよいと思いました。

施設選びには正解がありません。けれど、父が「ここなら安心して暮らせそうだ」と思える場所、そして私自身が「ここなら任せられる」と信頼できる場所に出会えたことは、本当にありがたいことでした。これから施設を探す方にも、自分や家族の「感覚」を大切に、ぜひ納得のいく選択をしてほしいと願っています。

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。

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