【知識のワクチン】#06 東京封鎖=ロックダウンは起こるのか?

いま感染爆発は起こっているのか?

ここ数日、東京都の確認された感染者が1日に60人以上増える日が続き、「過去最大」という不安をあおるような言葉がマスコミで飛び交っています。たしかに患者が急増している印象はありますが、次のグラフを見てください。


都道府県別新型コロナウィルス感染者数マップより「日次累計(対数)」、青棒グラフが確定感染者の累計、緑棒グラフが退院者の累計。

横軸は時間、縦軸は対数(縦軸の目盛りは10、100、1,000が等間隔)です。対数グラフの読み取り方はこちらの記事「新型コロナ感染者数グラフの正しい読み解き方」でご確認いただきたいのですが、結論を簡潔に申し上げると、対数グラフを見る限り増加の傾向に大きな変動はありません。つまり「感染が3倍の勢いになった」等ということはなく、傾向として従来から変動はないということです。また、注目いただきたいのは緑棒の退院者の伸びです。こちらも一定の率で増加しているので、医療体制に大きな動揺はないことが見て取れます。

そして、次のグラフもご覧ください。


The New York Times 「Coronavirus Deaths by U.S. State and Country Over Time: Daily Tracker」より国別死亡者数グラフ。縦軸は対数、横軸はその国で25人目の死者が出た以降の日数。

これも対数グラフを用いて、国別の死亡者の伸びを示しています。分かりやすいように日本を赤枠で囲いましたが、日本は死者の数・伸び率ともに先進国中で最低です。重症化する患者をいち早く見つけて集中的に医療資源を使う、という方針が効果を発揮していることがわかります。前のグラフでも見たように、現時点では、欧米のような爆発的感染にはほど遠い状態であると言って良いでしょう。

どんな状況になったらロックダウンになるのか?

さいきん「ロックダウン」という言葉が独り歩きしています。まず欧米で実施されているロックダウンの要件を挙げてみます(詳しくは「新型コロナで「外出禁止」ならどうなる? 欧州の事例を徹底比較」を参照)。

  1. 指定されたレッドゾーン=都市からの移動は禁止
  2. 個人的な用事での外出禁止(罰金刑あり)
  3. 通院・食料買い出し等は可
  4. テレワークができない仕事のみ移動可
  5. 公共交通機関は大幅に間引き
  6. 集会は原則禁止ないし人数制限あり

現時点では、イタリア、ドイツ、スペイン、フランス、イギリスなどの国々で、細部に違いはありますがおおむねこのような対応が実施されています。さいきんでは「東京封鎖」などという言葉が使われ始め、あたかも武漢など中国の都市で実施された完全な交通の遮断や人の行き来の途絶が起こるかのように感じてしまいますが、ヨーロッパでは最低限の都市機能、経済活動が行われるように配慮されていることがわかります。

では、東京でヨーロッパ程度のレベルのロックダウンは起こるのでしょうか?

線引きは「重症者の治療体制が維持できるか?」

次の図を見てください。

新型コロナウィルス対策ダッシュボードより

これは都道府県別の感染症病床がどれだけ埋まっているか?を視覚的に表した表です。東京都、神奈川県、千葉県、大阪府などでは、もともと用意された感染症病床が大幅に超えて患者がいることを表しています。これらの都道府県でどうやって受け入れているか?については「都内の感染症指定医療機関で何が起こっているのか」をお読みください。

都市部では、急いで医療体制を整えないと、いままで死者が少なかった日本の医療が限界を超えてしまう可能性があることがわかります。

この現状を打破するための方策として、先日施行された新型インフルエンザ等対策特別措置法の緊急事態宣言があります。この宣言がなされると、都道府県知事は、臨時医療施設の土地や建物の強制使用ができるようになります(例:小池百合子東京都知事が国際展示場を臨時病院として使用する等)。重症者の医療が限界に近づきつつある今、緊急事態宣言をためらう理由は、私には見つかりません。

またニュースソースの開示はできないのですが、都内で病院経営をする知人からの情報では、3月25日に小池都知事が記者会見を行った同日、都庁に都内の大病院30あまりの代表が招集され、感染症病床の拡大を要請されたとのことです。これらを使用可能にするためには緊急事態宣言が必要です。

さらに、この記事を書いている3月30日午後時点で日本医師会が記者会見を行い、まだ入院はできるが資源がギリギリであり「専門家の間では緊急事態宣言はもう発令していただいた方がいいのではないかという意見がほとんど。感染拡大の状況を見れば、もう発令していい」との認識を発表しました。過去、医師会の要請の翌日には内閣が動いて一斉休校を決めたので、今回も素早い動きが想定できます。

いきなり「ロックダウン」になるのか?

ただし、コラムの冒頭で見たように、現時点では「感染爆発」と表現するほどの感染状況ではありません。私見ですが、緊急事態宣言で可能となる施策はすべて同時に行われるのではなく、状況に応じて順次発動されていくと思われます。

シナリオ(1)もっともありそうなケース
数日以内に緊急事態宣言を行う。緊急事態宣言と同時に即日実施されるのは、臨時医療施設の設置、緊急物資の輸送要請、医療用品等の収容・保管、イベントの開催制限の要請など。そして、感染拡大の状況が欧米ほど爆発的ではない現状では、移動の抑制はそれほど厳しくない可能性もあると考えています。

シナリオ(2)少し先になるケース
補正予算成立後に緊急事態宣言を行う。この場合は4月上旬となります。次に、安倍総理が3月28日の会見で明らかにした5つの緊急経済対策の補正予算が国会に提出・成立(4月7日以降)して給付金の目処が立ち次第、外出自粛が求められる可能性があります。

シナリオ(3)緊急事態宣言を使わないケース
緊急事態宣言を用いずに医療体制の拡充を病院に求める。今回の感染拡大状況においては、法的な背景を持たない総理の要請・知事の要請だけで学校が一斉休校になり、北海道や都内の事業者が休日に自主的に休業を行っています。それらがある程度奏功している現状を鑑みると、社会的な影響を最低限に抑えるために「宝刀を抜かずに要請を行う」可能性もあると考えています。

しかしながら、どのようなケースになってもわれわれ一般市民が行う感染予防に違いはありません。外出をできるだけ控え、手洗いを励行しましょう。

秋月 雅史

秋月 雅史

投稿者プロフィール

人生の大半をITビジネスに捧げてきたが、起業してからは「自分が何屋」と言えない日々が続いているうちに本当に何者なんだかわからなくなった。いまは危機管理コンサルタント(本業)、ベンチャー取締役、Webブランディング会社マネージャーなどを兼業している。自称「丘にあがったセーラー」。帆船で世界中の夏を追いかける日々を過ごすことが目標。

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