【インタビュー】No.0029-02 小説講座を主催する鈴木輝一郎さんに作家になる方法を聞いてみた

作家の鈴木輝一郎さんのインタビュー、第二弾。今回は、「鈴木輝一郎小説講座」で講師を務め、数々のプロ作家を輩出している鈴木輝一郎さんに、作家になる方法についてお話を聞いてみました。「普通のことを普通にやっていれば、誰だって作家にはなれる」と断言する鈴木さん、さて、その心は……。

井上 鈴木輝一郎さんは、作家業の傍ら「鈴木輝一郎小説講座」の講師もやっているんですよね。どういう講座ですか?

鈴木 新人賞を受賞してプロになるのを目的にした講座です。オンラインで受講できるので、いつでもどこでも誰でも学べます。YouTubeでダイジェスト動画も配信していますよ。

井上 なぜ講座を始めたのですか

鈴木 2004年に名古屋で1年半やってみたのですが、そこの受講生が2人デビューしたんです。2010年に「ぎふ中日センター」からお声がけがあり、で、これはいけると思って「プロデビュー」に照準を絞ってみました。現在も、全国屈指のプロデビュー率を誇っています。

井上 そんな鈴木さんの目から見て、作家になれない人というのは?

鈴木 素質というより、全く書かない人は見込みがないですね(笑)。いや、これ意外とつまづきやすいところなんですが、原稿を書かないと受賞できないってことを、案外みなさんご存じない。まずは作品を書き、その作品を投函して、第三者からの評価を待つこと。

井上 とすると、作品を書いて投函したところがスタート地点?

鈴木 本当は受賞してからがスタート地点と言いたいところなんですが、そうするとみんな萎えてしまうから、とりあえずは「まず作品を書いて投函してみましょう」と。そうすれば、その作品の善し悪しが明確になり、次はどこを直せばいいかがわかる。書き上げなかったから、その作品のどこが悪いのかわからない。だから「まずは書き上げましょう」というのですが、なかなかそれができない。

井上 では、反対に作家になれる人とは?

鈴木 続けられる人です。芽が出るまで、時間がかかっても書き続けること。これさえできれば、誰だってデビューできます。

井上 え? 書き続ければ、誰でもデビューできるんですか?

鈴木 はい、誰でもデビューできますよ。ぼくは「1万枚の法則」と言っていて、400字詰め原稿用紙で1万枚書けば、だいたい誰でもデビューできる。ただし、「書いちゃ捨て、書いちゃ捨て」ではだめ。300〜400枚の作品を完成させたとして、通算1万枚書けば、たいていはその前にデビューします。

井上 1万枚書くとして、500枚を20作品! それは相当大変ですね……。作品を書いたら、投函する前に人に見せたほうがいい?

鈴木 いえ、プロになるんだったら人に見せないほうがいい。人に見せながら反応を聞きながら書くと、その意見を言った人の言うとおりに書くことになる。でも、その人が正しい判断できる人とは限りませんよね。むしろ、正しい判断ができる人なら、とっくにその人がデビューしている。

井上 とはいえ、最初は不安だから、人の意見を聞いてみたくなりますよね。

鈴木 反応を見ないと書けない人は、作家にむかないです。作家としてデビューした後も、孤独は続きます。作家になれば、あちこちからスポットライトを浴びると思われているけど、そうではない。いくら作品が売れても読者の拍手は聞こえてこないし、読者のコメントも作家のもとに届かない。でも書店にいくと、自分の本が並んでいる。そういうものなんです。

井上 そっか、作家になってもなかなか反応は見えてこないんですね。

鈴木 はい。だから、反応がないと書けないという習慣をつけていると、その孤独感に耐えられなくなる。誰にも褒められない、誰にも読まれないということが平気でなければ、作家は続きません。

作家は、舞台俳優ではなく映画俳優なんです。舞台俳優は、舞台に立って観客の拍手を浴びる。でも映画俳優は、拍手を浴びることはない。カメラの前で演技するから、観客の反応は見えません。ですが、カメラの向こうで見ている人を想像することができる。

井上 それはつらいですね。鈴木さんは、なぜ作家を続けられるんですか?

鈴木 書くことが楽しいから続いているんです。作家になって30年経つんですが、よく「30年もやっていてよくずっと楽しめるな」と言われますが、ほんと楽しい(笑)。書いているときは作家の目だからわからないけど、ゲラになって戻ってくると読者の目で読める。そうすると、「ぼくの作品、おもしろいなあ」って思います(笑)。

井上 ええっ、そうなんですか(笑)

鈴木 もちろん。自分の作品を読んで楽しいのは基本ですよ。以前、同業者と飲んでいて「自分が書いたものを読むとおもしろいよな」っていう話になったことがあります。それを聞いて、「おまえらバカじゃないの」っていった人がいた。「自分の作品なんて、恥ずかしくて読めないよ」って。そうすると、ひとりの作家がこういって怒ったんです。「おまえね、プロなんだから、少なくとも自分が読んでつまんないと思うものを、読者に金払わせて読ませているのか」。最低限のマナーですよね。

井上 鈴木さんは、ほかの人の本も読みますか。

鈴木 もちろん。今は月に40〜50冊ですが、一番多い月で1ヵ月900冊読んでいた。20年近く前に書評の仕事をやっていたころの話です。そのときは時代小説の文庫の書き下ろしが始まったばかり。まだあまり量がなかったので、今なら世の中に出ている時代小説全部読めるなと思って片っ端から読みました。

井上 900冊! 人って、そんなに読めるものなんだ……。

鈴木 さすがに900冊読むと、脳が煮えますよね。でも、それだけ読めば、読む前に作品の水準がわかるようになる。やっぱり、数をこなすことです。

井上 最後に、小説家を目指している人に一言お願いします。

鈴木 この業界では「小説家になりたい」という目的で書き始める人をさげすむ風潮がありますが、ぼくはそれでも構わないと思う。動機はなんでもいい。ただし、小説家になるためには、まず本をたくさんよんで、感動しなければなりません。小説で感動したことがない人は、小説で人を感動させることはできない。

なにを読めばいいかわからないという人は、書店に行ってみてください。書店に行くと、売れそうな物は手に取りやすいところに並んでいる。気になった本があれば、冒頭のところを少し読んでみてください。冒頭が面白ければ、だいたいその本は当たり。そうやって、読書量を増やしてみてください。

井上 ありがとうございました。

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)インタビュアー

投稿者プロフィール

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。日本冒険作家クラブ会員。

長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。

一般誌や専門誌、業界紙や新聞、ネットコンテンツ、広報誌などの制作をするかたわら、電子書籍専門の出版社「マイカ出版」を立ち上げ、オリジナル作品をパソコンおよび携帯電話の電子書籍の販売サイトにて販売している。

プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として、哲学カフェ@神保町の世話役を担当。趣味は考えること。ライフワークは「1000人に会いたいプロジェクト」

井上真花の公式ホームページはこちら

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