【インタビュー】No.0022-02 「ThinkPadはもともとIBMの手帳の名前」(竹村譲氏)

前回「カレーの東洋」と日本IBMのつながりについて教えて下さった竹村譲さん。現在、さまざまな活動をされていますが、今回はその中でも「Thinking Power Project」についてお聞きしました。「Think」というキーワードは、日本IBMの時代から使われていたとのこと。「Think」にまつわる四方山話も教えてくださいました。

井上 竹村さんがお持ちのバッグ、「Too Much Thinking is a Waste of Time」と書かれているんですね。面白い!

竹村 これは「Thinking Power Project」とREUDOのコラボで作った「THINK AERO」というバッグです。通気性と耐水性のあるタイベックという素材を使用していて、すごく軽いんですよ。昔はノートPCを衝撃から守るためにごっついPCバッグが必要だったけど、今はノートPCも頑丈になり、守る必要はなくなった。だから、むしろ軽くて持ちやすいバッグが必要。ということで、200gのバッグを作ってみたんです。ほかに、旅行かばんとトートバッグも出しました。

井上 「Thinking Power Project」とは?

竹村 もともと僕と遠藤さんが「自分専用のツバメノートを作りたい」と言い出したところからスタートしたプロジェクトです。そこにREUDOの長澤さん、イラストレーターのYOUCHAN、COBUの革製品デザイナーである久永泰子さんが加わりプロジェクトを起こしました。10年ほど前からツバメノート社との共同プロジェクトで「Thinking Power Notebook」という大人のための大学ノートや専用革ケース、本革手帳などを作り、銀座の五十音やロフト、ヴィレッジヴァンガード、信頼文具舗(WEB)等で販売しています。ノート以外にも、いろいろ作っていますよ。

井上 「Thinking Power Project」の商品に、トータルのコンセプトみたいなものはあるんですか?

竹村 特にありません、おもろいものを作ろうという、それだけですよ(笑)。みんながパートタイマーで専従者じゃないから、そんなノリでもやれる。

井上 ノートを開くと、「Think」という言葉がたくさんでてきますね。そういえば日本IBM のノートPCも「ThinkPad」でした。

竹村 「Think」というのはIBM社の社是(カンパニースローガン)で、その「Think」と「Pad」を足した造語が「ThinkPad」です。もともと世界中のIBM社員が持っていた紙の手帳で、「考える手帳」、つまり「ThinkPad」ですね。なかはプレインな白の手帳。これを使って自分でいろいろ考えろというわけです。

井上 そこから「Thinking Power Project」が始まったんですね。

竹村 実は「Thinking Power Project」には「Think Before Search(検索する前に考えろ)」というブランドスローガンがあります。ノートの中にも書かれているでしょう? これ、要は「もっと考えろ」ということ。あまりにもGoogleを使いすぎるとね、思い出の引き出しがさびて開かなくなる。頭をちゃんと使わないと、いつか「考えられない人」になってしまう。だから「ちょっと考えてみたら」と呼びかけているんです。自戒も含めてね(笑)。

井上 たしかに、すぐググってしまいますね。あれは、思い出すことを拒否しているというか、諦めているということですよね。

竹村 考えることは、続けていかなくちゃいけない。手放してしまうと、なにかよくないことがあると思いますよ。人間は考える葦。そこが動物と人間の根本的な違いでしょう。だから、「考えること」を捨ててはダメ。考えて、考えて、考え抜くことが大事なんです。

そういえば以前、IBMでモバイルコンピューティングのタグワードを募っていたんです。その時ぼくは「Think,Think Unthinkable and Think Again」という言葉を提案したんですが、IBMは「考え直す」というのが好きじゃなかったみたいで「Think,Think Unthinkable」になってしまった。ぼくはそれが残念で、ノートにこの全文を印字しました。

井上 なるほど。それで今は「Thinking Power Project」なんですね。考えることの重要性、よくわかりました。

竹村 ところが、頭で考えるだけでもだめなんですよ。このノートには「Brain can not compete with Heart」という文字も印字されているでしょう。これはね、「頭はハートに勝てない」という意味。感性は人に通じますが、ロジカル過ぎるものは拒否される。正当なことを言われても、人は受け付けないんです。企業は、ともするとロジックでつじつまをあわせようとするでしょう。でもそうじゃなくて、感性は感性でぶつけたほうがいい。そのほうが、相手にはダイレクトに伝わることが意外と多いんですよ。

ぼくらはThinking Power Projectでいろいろな商品企画をしますが、すべて「これ、おもろいやん!」から生まれる。ロジックではなく、感性です。時にはメンバーの中でも感性の思い付きをロジックで補完しようとする行動があるんだけど、最後は感性を大事にしたいですね。そして感性と同じくらい大事なのは、他人が持ってる力です。多くの他人の力を集約してぶつけ合って新しいことを創造して、発信することを私は「他力創発」と呼んでるのですが、これを具現化した”人のエンジン”が「熱中小学校」なんです。

――このあと、熱中小学校の話が続きます。次回をお楽しみに!

井上 真花(いのうえみか)

井上 真花(いのうえみか)インタビュアー

投稿者プロフィール

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。日本冒険作家クラブ会員。

長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。

一般誌や専門誌、業界紙や新聞、ネットコンテンツ、広報誌などの制作をするかたわら、電子書籍専門の出版社「マイカ出版」を立ち上げ、オリジナル作品をパソコンおよび携帯電話の電子書籍の販売サイトにて販売している。

プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として、哲学カフェ@神保町の世話役を担当。趣味は考えること。ライフワークは「1000人に会いたいプロジェクト」

井上真花の公式ホームページはこちら

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