【インタビュー】グローバルな子はワガママであれ!ジュネーヴ在住、杉野ママの子育てとは

かつしかFM「早く教えてっ!ママレーザー」のパーソナリティとしてご活躍していた杉野朋子さんは、小5の長女と小2の長男を育てるママ。夫の転勤で、2018年8月からスイス・ジュネーヴで暮らすようになり、ブログで毎日、毎日の暮らしを発信しています。そんな杉野さんがお子さんの夏期休暇を利用して一時帰国されたと聞き、すかさずアポイントを入れてインタビューを決行しました!日本とは全く違うジュネーヴでの子育て事情をお届けします。

井上 ジュネーヴの学校って、日本と比べるとどうですか?

杉野 日本はテクニックの国で、スイスは表現の国。とにかく「自分の意見を表現しなさい」と言われるんです。図工の絵でも「これはあなたが納得するまで表現した絵なの?」と。「時間が足りないんだったら私に聞いて。どんな方法でもあるから」と言われるんですよね。あなたは何を感じたか?ってことを一番重要視する国なんです。

娘は、日本では自分の意見を主張するタイプでした。でも、ジュネーヴでは「どうしてあなたは黙っているの?」って言われてしまって……。なぜ黙っていたかというと、彼女は先生が質問してくるのを待っていたらしくて。日本では、そうですよね。でも、ジュネーヴでは違う。だから、「おとなしい子」だと思われてしまったようです。

井上 あらまあ。それじゃ彼女、どうすればいいか、わからなくなっちゃったのでは?

杉野 そうですね。学校に通い始めた頃は衝撃を受け、どんどん人格が崩壊していったけど、そこからすぐに新しい価値観ができていく過程が凄かった。目に見えて変わっていくのが面白かったですよ。

井上 人格崩壊! それはまた凄まじい。

杉野 学校の様子も、日本とは全然違いますよ。たとえば、授業中はガヤガヤしているのが当たり前。黙って授業を聞いていたら、先生から「なんで黙っているの? それじゃ、存在していないのと同じよ」なんて言われてしまう。聞きたいことがあったら、いつでも話していい。「わからない」という言葉だって、ひとつの意見として受け取られるんです。今、私がこう思ったから、そのことをすぐに表現する。日本では「ワガママ」ととられてしまいがちですが、ジュネーヴではそうではなく、主張になるんです。

井上 ほかにどんなところが違いましたか?

杉野 なんでも自分で考えなくちゃいけないんですよ。学校に持って行く持ち物もね。日本では、持ち物リストがあったりするじゃないですか。でも、それがない。先生に「何を持って行けばいいんですか?」と聞くと、「あなたは何が必要なの? 必要なものを持ってきて」と言われてしまう。

そこで自分で考えて「必要な物」=「お気に入りの物」を持っていきます。もちろん、それが役に立たなかったこともありましたが、自分で納得して決めるということが大切なんだということを、親も一緒に学びました。なんでも自分で決めると、日本だと「好き勝手な行動をしていてワガママ」ととられがちですが、ジュネーヴでは「選択する能力がある」と考えるんですよ。

杉野 生徒たちは、よくお互いに声をかけあい、助け合っています。うちの子のように、たとえ言葉が通じなくても(笑)。先生が「集合」と言って来ない子がいると、誰かがすぐに駆け寄って、その子を連れてきますね。その理由を考えてみたのですが、たぶん宗教が関係しているのではないかと。スイスを含むヨーロッパでは、基本の考え方にキリスト教があるから「隣人を愛せよ」精神で助け合うのかも。そうそう「ポケモンカード事件」っていうのもありました。

井上 ポケモンカード事件?

杉野 スイスではポケモンカードがとても流行っていて、日本のカードは特別レアなんです。娘はそれほどマニアではなかったんだけど、いくつか持っていたので、それを学校に持って行きました。そうすると、いろんな子どもが彼女のもとに集まってくるんです。彼女はそれが嬉しくて、毎日いろんなカードを学校に持って行くようになりました。

ある日、男の子が彼女に「ぼくはこのカードをじっくり見たいから、お前はあっちを向いていろ」というんです。そのとき彼女は「やばい」と思ったけれど、怖くて言うことを聞いてしまった。回りにはほかの子がたくさんいて、みんな見ていたので大丈夫だろうと思ったんだけど、カードを盗まれてしまったんです。

彼女はこの事件に大変ショックを受けて、見たこともないような顔で大泣きして帰ってきました。気持ちが入り乱れていて、怒りと不安と恐怖があった。友達がそんなことをするなんて日本では考えられなかったから、きっと動揺したんですね。

すると、ひとりの勇者が現れたんです。その子は、カードを盗んだ子を先生のところに連れてきて「こいつがこの子のカードを盗んだ」と。先生は「あなたが盗ったの?」と聞くと、その子は「盗っていない」と。そこで先生は、「盗んでいないのであれば、彼女に戻しなさい。金曜日までに返しなさい」といいました。その子は木曜までずっと彼女につきまとって「ぼくは盗っていない」と言いましたが、彼女は「あなたは嘘つきだ。私に返すべきだ」と言い続けたそうです。

井上 おお、強くなった!

杉野 はい。最終的にはカードは戻ってきたんですが、そのとき思い出したのは、スイスにきたときに言われた「ディフェンス力を身につけろ」という言葉。それは「自分のことは、自分で守らなければならない。事実を見て、自分で考えなさい。信用できる人と、できない人を、自分で見つけなさい」という意味なんです。彼女は、この事件でその判断力を身につける機会に恵まれたんですね。

井上 ママはどうでしたか? なにか変わった?

杉野 私はおしゃべりが大好きだから、フランス語がでてこないのが辛かったです。誰かと話したくてしょうがない。だから、どんどんアピールして近づいていきました(笑)。この街のことも知りたいし、皆のことも知りたい! だから、知り合いを作る。まさにドラクエな日々ですよ。

井上 え、どういう例え(笑)?

杉野 「私はフランス語を習いたい」といって、知らない人に助けを求めたことがあります。息子の水泳教室でフランス語のテキストを開いているインド人を見かけて、その人に「私もフランス語を習いたい」ってことを伝えたいんだけど、インド語は話せない。そこで、身振り手振りで尋ねてみたんです。すると、その様子を見た息子から「ママはまたしゃべれないのに、誰かとしゃべってる」と(笑)。

井上 なるほど! ボディランゲージですね。

杉野 別の日に、教えてもらった場所に出かけていって、その近くにいる人に「フランス語を習いたい」と伝れば、そこでまた新しい情報と、新しい知り合いをゲットする(笑)。そんな感じで、少しずつジュネーブを自分の住みやすい場所にしていくものだから、日々楽しくなっていくんです。知り合いが増えれば増えるほど、自分の居場所が増えていく感じですかね。皆さん本当に親切で、「ありがとう」って涙がでますよ。

井上 現地校だと、学校でもずっとフランス語ですよね。子どもたち、大変じゃない?

杉野 そうですね。こういう場合、普通はインターナショナルに通うらしいです。そうすれば、少しは日本人もいるし、言葉は英語だし。……とはいえ、子ども達はフランス語同様、英語もできません。だったら、インターナショナルにしなくてもいいのでは?って。せっかくスイスに来たのだから、スイスの文化もしっかり知りたいし。それで、現地校にしたんです。

井上 たしかに。でも私だったら、子どものストレス考えて日和っちゃうだろうなあ。杉野さんは、そのへんのこと、心配しませんでしたか?

杉野 そうですねえ……「早く教えてっ!ママレーザー」というラジオ番組を通じて子育てのプロであるゲストの皆さんに教えていただいたのが、「ママが笑っていれば子供は大丈夫」ということ。ママが笑っていれば、子供も笑いますから。だから私は、いつも笑っていられるようにしています。そのために、楽しく過ごす努力は惜しみません!

井上 真花(いのうえみか)インタビュアー

投稿者プロフィール

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。日本冒険作家クラブ会員。

長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。

一般誌や専門誌、業界紙や新聞、ネットコンテンツ、広報誌などの制作をするかたわら、電子書籍専門の出版社「マイカ出版」を立ち上げ、オリジナル作品をパソコンおよび携帯電話の電子書籍の販売サイトにて販売している。

プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として、哲学カフェ@神保町の世話役を担当。趣味は考えること。ライフワークは「1000人に会いたいプロジェクト」

井上真花の公式ホームページはこちら

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