最近、アート関連の仕事が増えてきた。インタビューだったり、展示のレポートだったり。気づけば、そういう依頼が多くなっている。でも正直なところ、僕はアートに詳しくない。美術館に行くのも、思い出したようにたまに、くらいのものだった。
水玉と、宇宙人みたいな土偶
唯一まとまった記憶として残っているアート体験といえば、長野で見た草間彌生の作品くらいだ。マリオの世界に出てきそうな、巨大な水玉のフラワー。それから、鏡を使って光が無限に連なっているように見える部屋。どちらも単純に楽しかった。でも、僕のアート経験は、正直それくらいで止まっている。
もう少しアートに触れておきたいと思って、Claudeのアーティファクト機能を使って、有名な美術作品を歴史や背景とセットで紹介してくれる簡単なツールを作ってみた。西洋美術だけだと偏るなと思い、東洋や日本の作品も含めるようにしたところ、出てきたのが「遮光器土偶」だった。目が異様に大きくて、宇宙人か何かかと言われることもある、縄文時代を代表する土偶だ。たしかに、これもアートと言われればアートな気がする。
黒曜石は、みんなのものじゃなかった
遮光器土偶を見て思い出したのが、週末縄文人というYouTuberだ。平日は会社員、週末だけ縄文人になる二人組で、竪穴式住居を建てたり、土器を焼いたり、鏃を作ったりしている。スーツ姿のまま作業をする姿がどこかおかしくて、教科書だけではわからないこともある、と語っていたのが印象に残っている。中でも面白かったのが、縄文人は身近にあるものを使いこなす能力に長けていた、という話だ。
たとえば鏃。黒曜石で作ろうとしたが、うまくいかなかったらしい。素材が貴重すぎて、思い切って薄く削れなかったのだという。結果、的に刺さった瞬間、矢の本体が割れてしまった。そこで気づいたのが、黒曜石は当時の最高級品で、誰もが扱える素材じゃなかったということ。もっと質の低い石も、実際は使われていたはずだ。博物館でも、黒曜石の鏃が主役級の扱いを受ける一方、地味な石の鏃は展示ケースの端に控えめに置かれていた。そこで、そのへんの石で作り直したという。
漆でかぶれた手と、祖父の知恵
もうひとつ、印象的だった話がある。木の皮でポシェットを作り、漆でコーティングしたときのことだ。ゴム手袋が使えないので、素手で漆に触れることになる。当然、手はひどく荒れたらしい。その話を祖父にしたところ、こんな返事が返ってきたという。
小さい頃、植物でかぶれると、サワガニを捕まえてきて、潰して塗ったんだよ
縄文時代とは関係のない話だ。でも、かぶれとサワガニを結びつけて治療法にしてしまう発想には、素直に驚いたという。身の回りにあるものすべてに目を配り、使い道を見出していく。週末縄文人が惹かれているのは、結局そこなのだと思う。
そんな話を聞いていたら、ちょうど東京国立博物館で特別企画「ビフォー縄文 旧石器時代発見80周年」が8月23日まで開催中だと知った。当時を代表する石器や、復元された狩猟具が並ぶという。
週末縄文人の目を借りたら、地味な石器にも、誰かの工夫や迷いが見えてくるかもしれない。そう思うと、アートの見方も少し変わった気がする。近々、なにかの美術展に行ってみようかな。