父を東京へ迎えるプロジェクトで最初の難関は、「住む場所を決める」ことでした。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を調べ始めると、施設ごとに費用もサービス内容も異なり、どこに注意して選べばよいのかさえわかりませんでした。そこで再び ChatGPT の「Deep Reaserch」を使い、まずは大まかな相場観をつかむために尋ねました。
「都内東部エリアにあるサービス付き高齢者向け住宅の費用感を知りたい」
AI は、入居一時金が無料〜数十万円、月額は「十数万円台から二十数万円台がボリュームゾーン」と教えてくれました。さらに、月額費用は《家賃+共益費+生活支援サービス費+食費》が基本形であり、介護度が上がった際の追加負担や医療面サポートの扱いも整理してくれました。そのおかげで「見るべきポイント」が一気にクリアになりました。
続けて私は、
「同じエリアで評判が良いサ高住をいくつか教えて」
と投げかけました。AI は口コミ評価の高い施設を三つ挙げ、それぞれの特色をわかりやすく説明してくれました。たとえば「医療連携が速い」「生活支援が柔軟」「居室が比較的広い」といった具合です。父は自立寄りの暮らしを望みつつ、緊急時の対応を重視していますので、この整理が大いに役立ちました。
さらに、
「この予算内で、買い物やクリニック、図書館が徒歩圏にある場所がいい」
という希望を伝えると、AI は地図データをもとに候補施設の周辺環境(スーパーの有無、クリニックモールとの距離、公共施設までのアクセス)を要約し、「実際に歩いて道幅や段差の有無を確かめておくと安心です」とアドバイスを添えてくれました。
最後にもうひとつ、
「入居前に確認しておくと安心なポイントを教えて」
と尋ねると、AI は対応できる介護度の確認、途中退去時の清算、夜間の緊急コール体制や看取りまでの可否といったチェック項目を返してくれました。さらに「“入浴介助は必要時”と書かれている場合は、週何回を想定しているか確認しましょう」といった実践的なアドバイスもあり、経験者の声を聞いているかのようで心強かったです。
実際に現地に行って確かめること
AI が選んだ施設の中から二つを選び、訪ねてみることにしました。父は遠方に住んでいるため、自分の目で確かめることはできません。私たちが代理でしっかり見てくると告げ、出発しました。
一軒目は駅から近く、施設の雰囲気やスタッフの対応がとても良かったものの、私の家からは乗り換えが多く、父が私の家に来たいと思っても難しいだろうと判断し、候補から外しました。二軒目は我が家からの距離が近い点が魅力でしたが、スタッフとの会話がそっけなかったことと、現在空き部屋がなく待機が必要とのことで見送りました。
さらに追加で調査し、もう一軒――都心の喧騒から少し離れた住宅街に建つ施設――を訪ねました。我が家からとても近く、しかも近々一部屋空くとのことでした。祈るような気持ちで施設に入ると、廊下を歩く入居者の方々がにこやかに「こんにちは」と声をかけてくださり、スタッフの方も丁寧かつ親身に話を聞いてくれました。ここにしようと決心し、父に報告したところ、「とても嬉しい」と喜んでくれました。
料金の詰めとスケジュール固め
こうして仮契約を済ませ、次に AI が示したチェックリストを片手に、契約前の費用明細を一つひとつ確認しました。敷金は不要で入居一時金もゼロ。月額は《家賃+共益費+サービス提供料+食費》の合計で予算内に収まりそうです。介護保険自己負担分やオプションの家事代行は別途かかりますが、父が自立している現在は必要ありません。今後、要支援や要介護になった際に考えようということになりました。
手続きは三段階に分けて進めました。六月半ばに部屋を仮押さえし、月末に重要事項説明と契約書の読み合わせを実施して署名しました。ChatGPT が組んでくれたタイムラインに沿って遅延なく進み、同時並行で熊本の自宅整理と転出手続きの準備も進めました。七月上旬には大型家具と身の回り品を二便に分けて東京へ送る段取りが付き、施設側とも「入居の前々日までに家具を搬入し、当日はベッドメイクまで済ませます」と調整済みで、引っ越し本番へ向けて歯車がかみ合い始めています。
AI と人間の分業
今回痛感したのは、AI の強みが「情報の可視化と漏れの防止」にあるということです。相場観、質問リスト、逆算スケジュールを瞬時に整えてくれたおかげで、私は父の気持ちに寄り添う時間と現地確認に集中できました。一方で、スタッフの声色や建物の中の匂いといった“肌感覚”は自分の五感でしかつかめません。AI と人間、それぞれの得意領域を役割分担したことが、今回の移住プロジェクトを円滑に進める鍵になったと実感しています。
こうして父の新居は正式に決まり、契約も無事に完了しました。次の課題は、熊本の家じまいと引っ越し当日のサポート、そして入居初日のフォローアップです。ChatGPT との二人三脚はまだ続きます。次回は「実家の整理と引っ越し当日編」をお届けする予定ですので、また覗いていただけたらうれしいです。