トピックス

瓶詰の不安(楠田文人)

  宮田不安神経科医院の保存庫には、おびただしい数のガラス瓶が並んでいた。

「不安が生じると、脳内で不安素『アンキシフェトミン』が発生し、それが神経に作用して色々な症状を引き起こします。当院では、エリミネーターを使ってアンキシフェトミンをガラス瓶に転送していました」

 ところが、その「アンキシフェトミン」を狙って暗躍する一味がいるらしい。なぜアンキシフェトミンを狙うのか? どうやってアンキシフェトミンを奪うのか? 宮田不安神経科医院をめぐる戦いが始まる。

ネオ昭和シリーズ「壜詰の不安」(マイカ)

ネオ昭和シリーズ「壜詰の不安」(マイカ)

 

 

雷猿(楠田文人)

 その猿を初めて見たのは、小学生の夏だった。「振り返って見ろ」という声を聞いて振り向くと、雲の中からビルの屋上に向けて一本の紐が垂れ下がり、その紐を伝って上から何匹もの猿が降りてきた。

「おい、あれは何だ!」というと、その声に友達が振り返り、「あれって何?」と返した。どうやらその猿は、僕にしか見えないらしい。
 猿は、上から下に順番に赤い玉を手渡していき、一番下の猿はその赤い玉を屋上に置いた。
ポツッ。肩に雨粒が落ち、川向こうの黄色い古ぼけたビルを見た瞬間、ドシャーン! という凄い音がして、そのビルに雷が落ちたのだ。ビルは炎を上げながら崩れ落ちた。雷は、あの赤い玉を目印にして落ちてきたに違いない。

雷猿(マイカ)

雷猿(マイカ)

 

 

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