企業が基幹システムを導入する際、オーダーメイドとパッケージのどちらを選べばいいか悩むようです。果たして、どちらが良いのでしょうか。この問題を、実家のお風呂を例に考えてみます。
実家のお風呂は、オーダーメイドで作られました。それゆえに、他にはない魅力がたくさんあります。広々とした空間に大きな窓、高い天井……まるで銭湯にいるかのような贅沢な気分を味わえるデザインです。一方で、冬になると窓から冷たい風が入り込み、浴室全体が寒くなってしまうという問題もあります。ヒートショックを恐れた義父は、脱衣所に電気ストーブを置かざるを得ませんでした。オーダーメイドの良さは自由度の高さにありますが、使い勝手や安全性、例えば断熱性や手すりといった基本的な配慮が不足してしまうリスクも孕んでいるのです。
それに対して、マンションなどで採用されるパッケージ、つまりユニットバスはどうでしょうか。ユニットバスは、設計が標準化されているため、冷暖房や浴室乾燥機能などの設備が最初からしっかり整っています。さらに、掃除のしやすさや防水性、バリアフリー対応、手すりなどの安全装備が標準で備えられており、幅広い年齢層が安心して利用できる設計となっています。たとえ狭さが指摘されることがあっても、日常の使い勝手や安心感、安全性においては大きな魅力を持っています。
このお風呂の話は、企業の基幹システムの選択にも通じるものがあります。オーダーメイドのシステムは、企業ならではの業務プロセスや強みを細部にわたって反映できるという点で非常に魅力的です。しかし、その分、開発コストやリスク、さらには維持管理の難しさという課題も付きまといます。
一方、パッケージシステムは、業界標準のプロセスに基づいた効率性と安定性が確保され、使い勝手や安全性、保守面での安心感がありますが、企業独自の個性や強みが薄れてしまう懸念もあるのです。
また家の話に戻ります。昔の家を振り返ると、大工さんがひとつひとつオーダーメイドで家を建てていた時代がありました。彼らは長年の知識と経験を活かし、単にユーザーの希望をそのまま形にのではなく、使い勝手や安全性といった点にも十分な配慮をしていました。「そのやり方だとこういう問題があるから、こうしたほうがいい」といったアドバイスを通じて、結果的により良い住環境が作り上げられていたのです。
現代でも、オーダーメイドだからこその自由度は魅力ですが、専門家や匠の知恵を取り入れ、改善を重ねることで初めて、安全で快適な環境が実現できるのではないでしょうか。
こうした悩みは、お風呂やシステムだけにとどまらず、さまざまな分野で見受けられます。たとえば、僕がよく見ているYouTuberの中には、キャンピングカーをオーダーメイドで作ろうとしたものの、ビルダーとの考え方がうまくかみ合わず、思い描いていた通りの仕上がりにならなかったという事例もあります。今はリビルドに取り組んでいるそうですが、その過程も決して楽ではなさそうです。
こうしたエピソードから、さまざまな分野でオーダーメイドとパッケージの選択に伴う悩みやリスクがあることがわかります。理想の環境やシステムを追求するためには、今あるものをどう改善し続けるか、日々の使い勝手や安全性をどう向上させるかを考え続ける必要があるという現実を物語っています。
結局、どちらのアプローチにも魅力と課題が存在し、最適解というものは一概には決められません。理想を追求するあまり、使い勝手や安全性が犠牲になることもあれば、効率性を優先するあまり、独自性が失われてしまうこともあるのです。だからこそ、私たちは、今あるものをどう改善し続けるか、そして日常の中での安心感や快適さをいかに維持・向上させるかを、常に考え続けるしかないと感じます。
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