【知識のワクチン】#01 いま何が起きていて何が「怖い」のか?

はじめに

これを書いている2020年2月現在、中国を発生源とする新型が世の中を騒がせています。騒ぎが拡大するにつれ、町の様子も変わってきました。

まず、ドラッグストアの店頭からはマスクと消毒用アルコールが消えました。次に、マスクの転売騒ぎやSNSでのフェイクニュース、フェイクとは言わないまでも感染を怖れるあまりの極端な言動が目立つようになってきました。

この様子を見て、私は2008年の新型インフルエンザH1N1パンデミックのときのことを思い出しました。あのときも、やはりマスクや消毒用アルコールが売り切れて入手困難になりました。

私が「本当かな?」と思った過剰な反応もありました。日本最初の感染者となった神戸の高校生の周囲では、病気を怖れるあまり「その高校生が乗ったタクシー会社は利用しない」「その高校生が通う学校近くのクリーニング屋が『学校に近い』というだけの理由でボイコットされる」という噂が流れ、その情報を大手新聞が報道しました。

人間は、その長い歴史のなかで疫病の恐怖と闘ってきました。目に見えない原因で多くの人が亡くなっていく新型感染症は、呪術の時代にはとりわけ大きな恐怖だったであろうと思います。多くの病気の原因が解明され、ウィルスの遺伝子配列すら解読してしまうハイテクが発達した現代になっても、本質的な恐怖には変化がないように見えます。

何がそんなに怖いのか?

では、何がそんなに「怖い」のでしょうか? 死ぬのは、誰だって怖いに決まっています。しかし、ウィルスが原因とわかっていて、感染のメカニズムも感染を防ぐ方法もわかっているのに、そのうえで何が怖いのでしょうか?

おそらく多くの人々は「未知の病気の感染が広がる」→「このあと何が起こるのかわからず不安」→「情報を求め、ネットを検索する」→「ネットには玉石混合の情報がある」→「どれを信じればいいかわからず、振り回される」という状況にあるのではないでしょうか。

試しに「2020年2月に進行中の新型の拡大」を、恐怖を煽る言葉で描写してみましょう。

「死亡率の高い、眼に見えない未知のウィルスが、気づかないうちに身の回りにやってくる。そして家族や愛する人を苦しめ、最悪の場合は死に至らしめる」。

実際、それを証明するような動画や報道がネットにあふれています。なるほど、これは確かに怖いかもしれません。

では、次のように言い換えてみたらどうでしょうか。

「中国では、季節性インフルエンザと死亡率が同程度の『風邪のバイキン』の新種が広まろうとしています。しかし、医療と保険制度が発達し、消毒用アルコールが売り切れるほど情報が広まり、多くの人がマスクをして歩くほど衛生観念の発達している日本ですから、このバイキンが上陸したところで、大した流行にはならないでしょう」。

私は、2008年に多くの企業向けに新型インフルエンザ対策を立案した危機管理コンサルタントですが、そんな私から見ると、現在の状況はこんな風に見えています。

この連載では、今回のコロナウイルスに限らず、未知の感染病が広がった際にはどのように対処すればいいかということを、具体的な対策と共に解説していきます。ネットの情報に振り回されて疲弊してしまわないよう、正しい知識ワクチンを身につけていきましょう。


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秋月 雅史

投稿者プロフィール

人生の大半をITビジネスに捧げてきたが、起業してからは「自分が何屋」と言えない日々が続いているうちに本当に何者なんだかわからなくなった。いまは危機管理コンサルタント(本業)、ベンチャー取締役、Webブランディング会社マネージャーなどを兼業している。自称「丘にあがったセーラー」。帆船で世界中の夏を追いかける日々を過ごすことが目標。

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