【旧車生活】機能美と伝統美

道具の話を書いていたところ、タイムリーな話題が。
日本屈指の超高品質工具メーカーKTC((京都機械工具株式会社)が、ユニークな工具を発表しました。工具好きな人なら、思わず手に取って頬ずりしたくなる製品です。ラチェットハンドルとしては世界最高峰の製品だといっても過言ではない同社の nepros(ネプロス)。そのハンドルに艶やかな伝統装飾を施した漆nepros【柳】から【瀧】まで全7種、価格はなんと1本22~47万円で完全受注生産だそうです。

【パッと見、工芸万年筆のような佇まい】
【パッと見、工芸万年筆のような佇まい】

もともと「nepros」は、鍛造からメッキ処理まで、複雑で様々な工程を経て製造されます。いずれも熟練の職人が丹念に仕上げているため、際立つ機能美を纏っていますが、さらにそこに荘厳華麗な伝統装飾を施すとは……。正直、少々やり過ぎ感を覚えました。しかし、そこは工具を極めた京都の会社。高い技術力を持つKTCだからこそ、機能美と伝統美を高次元で融合するという、誰も真似できないことを実現できたのでしょう。単なるプロトタイプや参考品で終わらせないところに、KTCの心意気を感じました。

さて、工芸品の域まで突き詰めたこの雅な道具。一体、どんな方が購入されるのでしょう。実際にこれを使用するために購入する人は少ないと思いますが、工場の経営を頑張ってきたお父さんへのプレゼントや、功労があった技術者の方への記念品、あるいは退職記念などに適しているかもしれません。

【情熱を宿した逸品は桐箱入り】

家人が寝静まったら、そっとベッドを抜け出し、
古いワークデスクの上にあるグラのデスクランプを灯す。
引き出しの奥から取り出した桐箱を机の上に置いたら、
とっておきの「アイラの女王」をリズモアのタンブラーに注ぐ。
桐箱の蓋を開け、ハンドルを手のひらに載せたらひと口。
目をつぶり、その重さを愛でながら、記憶の扉を締め付けたボルトを探す。
手の温もりが金属の肌に移ってからほどなくすると、
最初の一本が見つかるはずだ。
ボルトのサイズにあうソケットを取り付けたら、ゆっくり、優しく緩めてやる
チリチリ、チリチリ、チリチリ……。
90枚のギア、送り角4度で、7段クローが空転させる心地よい音を響かせる。
一本、もう一本。抜けるたびにもうひと口。
三杯目のグラスが空になるまでに、全部のボルトが抜けていると良いのだけど。
まあいいさ、時間はタップリあるのだから。

水瀬 涼介ソリューションサービスチームリーダー

投稿者プロフィール

頭のなかにある景色を言葉にしていく楽しさを真花さんに教わり、
「カタチとして残るもの」へのあこがれを抱いてマイカのメンバーに加わった。

趣味は愛する旧車のメンテナンス。
愛車は1971年式のFIAT500-L

●これまでの主な仕事
外資系物流業界に長く従事。システム部、キーアカウント、4PLなど社内のあらゆる部署を経験したオールラウンダー。

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