【#0024】熱中小学校は人材育成の場。「大切なのは、人とのつながり」(竹村譲氏)

この企画では初の3部作となってしまった竹村譲さん記事。最終回となる今回は、竹村さん属する「オフィス・コロボックル」が手がけているプロジェクト「熱中小学校」についてお聞きしました。最終回にふさわしく、とても貴重なお話です。ぜひご一読ください!

井上 「熱中小学校」という名前の由来は?

竹村 名前の由来は、高畠町の会場となっている校舎が水谷豊さん主演のテレビドラマ「熱中時代」のロケで使われた場所だったから。2014年の末、山形県高畠町の地元の方から「高畠町にある素晴らしい時沢小学校が廃校になってしまったけどなにかに使えないか」という相談がオフィスコロボックルにありました。そのとき考えたのは、もともと小学校だから、今回も小学校として使えばいいということ。それで2015年10月に出来上がった「大人の社会塾」が、熱中小学校の始まりです。現在は、高畠を含め日本全国で13校。さらにシアトルにも1校増えました。全部で14校です。

井上 熱中小学校では、どういうことをやっているんですか。

竹村 コンセプトは「もういちど7才の目で」。百数十名の経験豊富、先駆者で個性豊かな教諭たちが、社会や国語、算数、理科、図工、体操、家庭科などの授業を小学校をイメージして行います。

井上 サイトで教諭陣を見ましたが、本当にすごい人ばかり。どうやって集めたんですか。

竹村 最初は、ぼくや堀田さんの知り合いからお願いしました。だから、当初はIT系の人が多かった。ぼくが最初に声をかけたのは、ジャストシステムの浮川和宣さんや、HONDAのアコードやシビックをデザインされた杉山智之さん。堀田一芙さんが声をかけたのは、日本マイクロソフトの初代代表取締役社長である古川享さん。角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員である遠藤諭さんは、社会の先生です。

内田洋行の大久保昇社長は理科の先生ですし、日本アイ・ビー・エムの名誉相談役である北城恪太郎さんはPTA会長です。それから、残念ながら昨年末に亡くなった富山大学芸術文化学部名誉教授の前田一樹さんは、プラマークのデザイナーであり、図画工作の客員教諭でした。熱中小学校やオフィス・コロボックルのロゴのデザインもしていただきました。

この人たちに教諭就任をお願いするとき、「すいませんが、出せるのは交通費と宿泊費のみです」と最初にお願いしてOKをもらったので、あとはもう鬼の首をとったようなもので(笑)。どんな人に依頼するときも「こういう教諭陣の皆様にも交通費と宿泊費のみでお願いしています」といえば、「では、私も」となる(笑)。そんなこんなで、百数十名の先生にボランティアでやって頂いています。

井上 なぜそういう学校を作ろうと思ったんですか。

竹村 よく「地方創生プロジェクト」と言うのがありますが、いくら企業を誘致してもダメ。必要なのは人材です。「こういうことがやりたい!」という気持ちがあり、いろんな人を巻き込んでいくような人がいなければ、地方創生は望めません。熱中小学校は、そういう人材を育てるために必要な場でありエンジンとして始めました。地方にそういう力のある人が増えれば、おのずと活気が生まれ、街のにぎわいを取り戻すことができるはず。

井上 どういう人が授業を受けているんですか。

竹村 年代を言うと、下は20代から上は80代まで。授業は一期が半年で、授業料(高畠熱中小学校の例)は60歳未満が1万円、60歳以上が2万円。現在、全世界14校に約800人の生徒がいます。高畠なら高畠近郊に住む生徒が多いですが、東京から新幹線に乗って来る人もいますし、オンラインで配信している授業もあるので、基本、どこに住んでいても生徒になれます。学校間や生徒間の交流も盛んです。

授業は基本的に60分+10分休憩ですが、学校によってワークショップを含む90分くらいの選択授業もあります。でも、そんなに長くもたない人もいるので、実際はそれより短いかな。授業のあとは、ホームルームや茶話会があり、そこでいろんな人と話せます。自分の仕事で困ったことがあったら、その場でいろんな人に相談することもできます。普段は出会うチャンスのないような人と会って話し、そこでヒントを得るということも、得がたい経験になると思うんですよ。

井上 なるほど、異業種交流ですね。

竹村 「オフィス・コロボックル」もそういう場所で、あれは2011年3月11日の震災のあと、自宅まで歩いて帰った堀田さんの「会社と家の間にも働ける拠点が欲しいよね」という着想が基本になって生まれました。

いろんな企業が関心をもってくれて、支援を申し出てくれたのですが、ぼくらは「資金ではなく、道具や機材そしてそれを支援してくれる人の力を貸してください」と、何より高価なものをお願いしてしまいました。その結果、オフィス什器や超高額なプリンタ等、いろいろな企業様から寄贈して頂きました。

そこにあるのは「一番大事なのは人」という基本概念。前回の話でも出てきた「他力創発」です。多くの他人の力を集約してぶつけ合って新しいことを創造して拡散していく場を作る。それが「オフィス・コロボックル」であり「熱中小学校」なんです。

参考URL:熱中小学校

井上 真花(いのうえみか)インタビュアー

投稿者プロフィール

有限会社マイカ代表取締役。PDA博物館の初代館長。日本冒険作家クラブ会員。

長崎県に生まれ、大阪、東京、三重を転々とし、現在は東京都台東区に在住。1994年にHP100LXと出会ったのをきかっけに、フリーライターとして雑誌、書籍などで執筆するようになり、1997年に上京して技術評論社に入社。その後再び独立し、2001年に「マイカ」を設立。

主な業務は、一般誌や専門誌、業界紙や新聞、Web媒体などBtoCコンテンツ、および広告やカタログ、導入事例などBtoBコンテンツの制作。

プライベートでは、井上円了哲学塾の第一期修了生として「哲学カフェ@神保町」の世話人、2020年以降は「なごテツ」のオンラインカフェの世話人を務める。趣味は考えること。ライフワークは「1000人に会いたいプロジェクト」

井上真花の公式ホームページはこちら

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